医療分野で活躍する新進気鋭のクライアントより、こんなご相談があった。
1.特定のサービスを受けた顧客だけを対象としたメルマガをスタートしたい
2.メルマガ登録完了と同時にウェブアンケート画面を表示し、顧客の声を拾いたい
3.メルマガ会員に対して、後日新たなウェブアンケートも実施したい
スクラッチ開発(分かりやすく言うとオーダーメイド)でシステムを構築すればもちろん可能なのだが、それなりの費用や期間が発生する。
だが、テスト的に始めるプロジェクトということもあり、初期投資はできるだけ小さくしたい。
というわけで「ASP」をあたることになった。
そもそもASPとは
ウェブやシステム業界の人でなければ、ASPってなに?という状態だろう。
ASPおよびSaaSは、いずれもインターネットを通じてアプリケーションを提供するものです。ASPとはアプリケーション・サービス・プロバイダ(Application Service Provider)の略で、インターネット上でアプリケーションを提供するサービスの提供者(事業者)のことを言い、提供されるソフトウェアやサービスのことをASPサービスと言います。
参照:総務省「国民のための情報セキュリティサイト」
わかったようなわからないような説明だが、ザックリいうと「ありもの」のシステムだ。
つまり、ゼロから構築する必要がない。
ASP提供会社側でサービスやシステムの保守もしているので、そういった管理の手間もいらない。
しかし「ありもの」ゆえに、こちらの欲しい、痒い所に手が届く機能を持っているかどうかがASPによって千差万別だ。
冒頭で述べた3点以外にも実は細かな要件があったため、ピッタリ合うASPは少なかった。
トライコーン社の「クライゼル」を選定
複数のASPに問い合わせて試用環境を用意してもらい、実際に機能をテスト。
その結果、トライコーン社の「クライゼル」を導入することになった。
宣伝を頼まれているわけでもなんでもないが、クライゼルの素晴らしい点を述べていきたい。
導入理由1:柔軟
クライゼルだと冒頭の「2」の要件である、メルマガ会員登録からウェブアンケート実施まで途切れずにできる。
他社ASPでは、そもそも会員データと紐づけてアンケートができなかったり「登録完了1日後にメールが配信され、そちらからアンケート画面に誘導」という回収率に悪影響を及ぼす方法でしか実施できないものがあった。
そしてクライゼルでは、このアンケートで拾えた情報についても、会員登録のDB(データベース)に対して新たなデータとして追加されるようにもできるし、別のDBに追加することもできるなど、自由度が高い。
また、だいたいどのASPも、最初に管理画面でDBを定義・設定することから始める。
しかし、一度DBを組んでしまったが最後、後からそのDBに項目を追加したり、定義を変えたり、順番を入れ替えたりということができないASPも見られた(もちろんDBの整合性を保つためだというのは分かるのだが)。
クライゼルはこの点も非常に柔軟だった。
そしてDBに設定した項目を使って、今度は登録フォームやアンケートフォームに反映するわけだが、ここでも「DBでの設定に依存せず、フォーム上での表示名を変えられる」「DB上は必須ではない項目を、指定のフォームに限って必須にする」など切り替えの自由度が高く、なおかつ楽で助かった。
導入理由2:サポートがナイス
問い合わせに対する返答が素早く的確で、親切だった。
少なくとも導入時にはメイン窓口となってくれる担当者さんがおり、こちらの実現したいことを把握しながらサポートしてくれる。
これは大変ありがたかったし、本契約をする前のできる・できないの判断がとてもしやすかった。
導入決定まで時間がかかってしまい試用環境の利用期限が切れてしまったのだが、それについても柔軟に延長してくれた。
導入理由3:拡張性
今回使いたかった機能以外にも、サイト(CMS)サービスやLINE連携など「プロジェクトがうまくいけばたぶん使いたくなるだろうなあ」というオプションサービスも網羅されている。
新しいことをやりたくなったら全く別のASPを導入しなくてはならない、というのでは非効率なのでこれは将来的な安心材料である。
ここがちょっと・・・
以上のように全体として不満は全くなく、とても完成度が高いと思う。
ただ、大した問題ではないものの、いくつか気になった点はある。
これはクライゼルに限らず「ASPあるある」なのだが、管理画面のデザインがちょっぴり旧めかしい。
今の緑と黒のベースのデザインだと操作していて“作業している感”が強くて、楽しい気持ちになりにくい気がするんだよな・・・
よく言えば質実剛健というか。
項目の設定によっては(あくまで管理画面内で)レイアウトがやや崩れるページもあった。
これらは導入のジャッジをするクライアントの心理面、つまり「とっつきやすさ」にも影響するので課題かと思う。
※ちなみにこの点でよく出来ているな、と感心するのがプロジェクト管理ツールの「バックログ」
もちろん、管理画面の安定性を考えれば安易にデザインをアップデートできないのは仕方がないのだろう。
また費用面についても、クライゼルのウェブサイトで見当たらなかったためこの場での記載は避けるが、さすがに数千円/月というレベルではない。
一応の留意は必要だ。
【2018年11月30日追記】
管理画面のデザイン、現時点では刷新されています。
ですので上記の「管理画面のデザインがちょっぴり旧めかしい。」ということはありません。
最後に宣伝を・・・
ここからは完全に当社の宣伝なので読み飛ばすか「そっ閉じ」してください。
もし今回のような要件でいきなりシステム会社に相談した場合、他社ASPを勧められずに、そのシステム会社による構築・開発を提案されるケースが多いだろう。
もちろんシステム会社はそれが生業なので、このことはなんら問題ないと思う。
しかし、当社はシステム会社やデザイン専門会社ではないので、クライアントの「Web担当者」になりきって、どうすれば一番理にかなった選択になるかを考える。
システム会社に依頼してオーダーメイドで作るか、それともASPでまかなえそうか。
今回はクライアントと一緒に、ASPが妥当ですねという結論にいたった。
クライアントも我々も、不要な費用や労力を減らすことが出来たと思う。
そういうWebディレクター、もしくはWebコーディネイターとでもいうべき立場で動くことができるのが強みだ。(鼻息)