人生で避けて通れない、お葬式という特殊な局面。
これについてあくまで「商取引」という側面に絞り、消費者側として気づいたことをポッドキャストにしました。
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AIによる要約
この番組のホストは、葬儀会社との取引経験を通じて、精神的に追い詰められた状況での即断即決、独自の商取引慣行、巧みなオプション戦略など、葬儀ビジネスの特殊な側面を興味深く解説し、透明性とコミュニケーションの重要性を語っています。
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このポッドキャストでは、スモールビジネスやその周辺のカルチャーについての話題をお届けしていきます。
再生ありがとうございます。
ウェブディレクションと音源制作を手掛けるシララ株式会社の伊東宏之です。
今日は、葬儀会社さんのビジネスが興味深かった件についてお話ししたいと思います。
私事なんですけれども、最近実は立て続けに、喪主ではないんですが、喪主とちょっと近い立場で葬儀を行う経験がありまして、その中で別々の葬儀会社さんに2回ご依頼をする機会があったんですね。
今回、この放送ではあくまで経済的な側面だけに絞ってお話をしたいので、あえて受発注というふうに表現したいんですけれども、僕たちが普段いわゆるビジネスパーソンとして受注発注する取引とちょっと違う商習慣だったり振る舞いというか文化を感じられたので、その辺りについてお話ししたいと思います。
まず初めにお断りしておきますと、それが良いとか悪いとかという話ではなくて、たんに差分を感じたというか、なるほど、そっちの業界はそうなのか、と思ったということですね。
今回の経験から、スモールビジネスを自分がやっていく上でもちょっと気をつけなければいけないなという点も見られたので、それについても触れたいと思います。
まず、葬儀会社さんとの取引が発生する背景の特徴として、いわゆる冠婚葬祭の中で葬儀というのは最も時間がタイトだということが言えますよね。
結婚式なんかだと精神的にも余裕がある状態だと思うんですけれども、その真逆で全く精神的リソースがない中で、次々と示される選択肢を即断・即決していかなきゃいけないという、非常に特殊な状況であって、その中での商取引だということですよね。
それ故に、なかなか比較検討の相見積もりのようなこともしづらいという微妙な局面でもあるんですよね。
例えば長期で療養されていて、余命がもう分かっているという場合だと、事前にご本人も主導になって、葬儀会社を入念に比較してプランを決めているという場合もあり得るとは思うんですけれども、私が経験した直近の2回では、葬儀会社さんのリストアップこそギリギリしてはいたものの、何ら葬儀会社と事前に相談はしていなくて、結局、看取りをした後で初めて葬儀会社に連絡を取るような形でした。
終わってみてこれは気づいたんですけれども、葬儀っていうのは、個人が亡くなって最初に電話をかけた葬儀会社さんでやることにほぼ自動的に決まってしまうんだなと。
もし葬儀会社さんの方で、あるいは業界に詳しい方で、それは違うよっていうのがあればすみませんが、これは1ユーザーの体感として、私の場合は今回そうだったんですよね。
そして事前にリストアップだけはしていた葬儀会社さんのうちの一つに、今回もお電話をしました。
葬儀会社さんは
「ご遺体の痛みが心配なので、まずはとにかくドライアイスをお持ちさせてください」
とおっしゃったんですよね。
こちらとしては、そういうものか、じゃあありがとうございます、お願いしますというふうになったんですよ。ドライアイスを持ってきていただいて、当然といえば当然ではあるんですけれども、どんどん火葬場の予約の話とか、葬儀の具体的なプランの話に突入していってしまったんですよね。
僕としてはさすがに途中でちょっと待ってくださいと言ってしまいまして、確かにこのままの流れでそちらにご依頼をさせていただくのがスムーズなのはわかるんですけれども、まだ正式なご依頼、つまり発注をしていない状態ですよね。なのにどんどん具体的な話になってきてますねということをちょっと申し上げたんですよ。
そしたら葬儀会社さんの言い分としては、ドライアイスを持ってきた時点で葬儀のご依頼ということにさせていただいていますということだったんですよね。
ここですね、我々が普段接しているビジネス上の一般常識とはちょっと違くないですかね。
もし普段仕事している時の自分であれば「それはさすがにちょっと成立しないんじゃないですかね」と返してしまって、ドライアイスのお金は払うので、他の葬儀会社さんにも相談して比較検討したい、ということも言ってしまうかもしれないんですよね。
ただ何しろ今から3、4日の間で火葬場はもちろん抑えて各方面にお知らせもして、葬儀も全て終えないといけないというタイムラインの中で、さらに自分だけじゃなくてその周囲の人間の心身の疲労とか混乱もある状態で仕切り直すのはちょっとリスクがあるなというふうにこの時も思ったんですよね。
なので結局その葬儀会社さんにお願いをしたんですけれども、このやりとりって僕たちがビジネスを展開する上でも気をつけるべき原則的なポイントがあるなと思いました。
これはもうとてもシンプルなことなんですけれども「後出しをしない方がいい」ということですよね。
つまり「ドライアイスをお持ちしたならそのまま弊社で葬儀まで基本的にお任せいただくという流れとなりますがよろしいでしょうか」というふうに葬儀会社さんは電話を最初に受けた時点でひとこと言っておけばいいんですよね。
そもそもそう言われて「じゃあドライアイスを持ってこないでください」と断る可能性自体もあまり高くないじゃないですか。
なのでそういったことをはじめに明確にしておく。
つまり受発注に関するボーダーラインを明確にしておく、というのはむしろその後で相手方に不安を抱かせないためにもすごく必要な振る舞いなんだよな・・・と改めて思いました。
それと今回気がついたのはオプションの巧みさですね。
これ決して悪い意味で言ってるわけではなくて、上手だなというふうに思いました。
葬儀の祭壇に用意するものってだいたい左右が対になってるんですよね。
なのでまずお花1つ3万円を選びます、と。
そうするとだいたい自動的に2つ置く必要が出てくるので、なので結局1つ選ばせてそれが倍になるという感じですね。
値段設定自体もうまくされてるなと思ったのが、いろんなオプション・選択肢の中で価格帯を3つぐらい用意しておいて、おそらく真ん中を心理的に選びやすくしているんじゃないかなというふうに見えました。
これはですね、行動経済学あたりで言及されている「相対性」というやつなんだろうなと思うんですけれども、値段や内容の豪華さで一番安いものを起点として、例えば40%金額を増やせば内容は倍ぐらい豪華になるよみたいな感じですね。
わざと相対的に魅力的ではないものを選択肢に入れておくというやつだと思うんですよね。
こんな感じの仕掛けがされたパンフレットの中でどんどん即決をしていかなきゃいけないんですよね。
ここでちょっとデータを見てみたいんですけれども、株式会社鎌倉新書が実施したお葬式に関する全国調査2022年版によると、葬儀費用の総額の平均は110.7万円だそうです。
つまり、各葬儀会社さんがベース価格として設定している基本プランのだいたい倍ぐらいの金額に最終的に膨らみやすいということかもしれないですよね。
もちろん葬儀会社としても葬儀会館という不動産の建設だとか、維持というコストもかかっているビジネスだと思うので、それでも利益率というのはあまり高くないんじゃないかなと思いました。
そう思って調べてみると、営業利益率の平均が3.5%だという情報もネットで検索すると出てきたので、そんなには儲かるものでもないのかなというふうにも思いました。
あとは葬儀が終わった後も葬儀会社さんからすれば重要なマーケットだなというのも今回わかったんですよね。
まずお香典返しの手配ですね。葬儀が終わった後とかでもお香典とかっていうのがたくさん送られてくるので、そういったものに関してもお香典返しをしなければいけない。
その他にもお墓とかお仏壇、これはかなり高額な品ですよね。
そして相続に関する困りごととか遺品整理とか、あるいは遺族も高齢の場合が多いでしょうから、高齢者向けのリフォームとか、またはそうですね、老人ホームの手配とかまでワンストップで葬儀会社からその葬儀会社の関連会社に依頼ができるようになっているわけですね。
これは当然商売として出口までちゃんと抑えておくという王道をやっているなというふうに思って参考になりました。
もちろん全部これも直接やっているわけではなくて、おそらく提携先があって手数料を取っているというモデルなんだろうなというふうには見えました。
また、完全に余談なんですけれども、以前非常に高額な高級なお仏壇を扱う仏具屋さんに仕事で取材に行ったことがあるんですよ。そこでその販売をされている方のセールストークというか決め台詞がすごくて、こういう感じのものだったんですよね。
「奥様への最後のプレゼントとして最高のお仏壇を贈りましょう」
というものだったんですよね。
上手いですよね。
最後のプレゼントと言われれば、やはり財布の紐というものがもう緩むどころかなくなってしまうような、そんな感じもしますよね。
というわけで、今日は葬儀会社のビジネスモデルが興味深かった件についてお話ししました。
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