JNCAP発表 軽自動車の側面衝突試験をチェック

このブログへは自動車の安全性に関するキーワード、特に「側面衝突」でGoogle経由でのアクセスが多い。
これは過去のエントリー
クルマの「側面衝突試験」が日本と海外でだいぶ違う件
の影響だが、自動車の安全性について考える人は以前より多いのだと実感する。

振り返れば1996年ごろから、TOYOTAを皮切りに各メーカーが衝突安全性を売りにしはじめた。
衝突実験時のひしゃげた車体など、それまで日本の自動車広告では禁忌だった事故を想起するイメージを積極的に訴求するようになった。
これによって、二十年がかりでユーザーの意識が変わったのだと思う。

そんな2018年の5月31日、JNCAP(NASVA 独立行政法人 自動車事故対策機構)がH29年度後期の「衝突安全性能評価」を発表した。
その中で今回は軽自動車の側面衝突に絞ってチェックしてみたい。


画像参照元:JNCAP H29年度(後期)衝突安全性能評価新規車種ページ

 

軽自動車の側面衝突に着目したい2つの理由

なぜ軽自動車かというと、まず全幅が最大1480mmしか取れない制約により、特に側面衝突で不利だからだ。
今回の試験で最高得点をとった普通車のMAZDA・CX-8は全幅1,840mm、車重は1,810㎏と堂々たる体躯をしている。
欧州車を中心としたニューモデルの全幅が拡大傾向にあるのは、側面衝突の安全性を高めるためだと多くの自動車メディアでも言われている。

そしてもう1つの理由は、今回の試験対象となったHONDA・N-BOXの装備だ。
これまで軽自動車では無視されてきたに等しい「サイドカーテンエアバッグ」がベースグレードでも装着可能で、試験映像においてもそれが確認できる。
 
N-BOXの試験映像▼

サイドカーテンエアバッグ有無による軽自動車の「頭部障害」「胸部変位」スコア

サイド・カーテンエアバッグが搭載されているN-BOXと、そうでないダイハツ・ミライースという軽自動車2車種で側面衝突試験のスコアを比較してみよう。

車種 頭部障害値【HPC】 胸部変位【㎜】
N-BOX 86.8 22.95
ミライース 573.3 21.55

参照:JNCAP H29年度(後期)衝突安全性能評価(N-BOXミライース
※他にも側面衝突に関する指標はあるが、致命傷に直結すると思われる2つの指標で比較をした。参照元もぜひご確認を。

「胸部変位」の数値は大きく変わらないように見えるが、「頭部障害値」の差は486ポイントと大きい。
ここでミライースの試験映像を見てみよう。

台車の衝撃もあるので断定はできないが、ダミー人形が頭部でガラスを叩き割っているように見える。
自分自身の頭が堅いフロントガラスが粉砕するほど打ち付けられることなど、想像すらしたくない。
いずれにしても、サイドカーテンエアバッグの有無が「頭部障害値」を大きく左右していると推察できる。

話が脱線してしまうが、現行ミライースのデザインはとても良いと思う。
Audiのポリゴンデザインに通じるような直線・多面体のスタイリッシュさを感じる。
なので個人的な心情としては、デザインと安全性は無関係とわかりつつも今回の結果がちょっと残念だ。

比較のため、総合評価で最高得点となったMAZDAのCX-8も並べてみた。

車種 頭部障害値【HPC】 胸部変位【㎜】
N-BOX 86.8 22.95
ミライース 573.3 21.55
(参考)CX-8 27.4 6.43

参照:JNCAP H29年度(後期)衝突安全性能評価(N-BOXミライースCX-8

やはりボディサイズのゆとりによるものか、N-BOXと比較しても極端にスコアが良い。
▼CX-8の試験映像

そもそもシートポジションが高いので、突っ込んでくる台車の衝撃は、腰から下に集中しているように見える。
もしかしたらN-BOXとミライースのスコアは、座面の高さの差もいくらか影響しているのだろうか。
難しいだろうけど、N-BOXのサイドカーテンエアバッグ装着車と非装着車の社内試験結果をHONDAが公表してくれればとても参考になるのだが。

いずれにしても、側面衝突がハイリスクとなる軽自動車を買うならことさら、サイドカーテンエアバッグ(※)の有無に注意すべきであることは間違いない。
ただ、サイドカーテンエアバッグを選びたくても、現時点では新車時のオプションですら選べない軽自動車がいまだに多い。
もちろん、自動車の安全性を側面衝突だけで語ることはできないし、国が定めた軽自動車規格のいびつさにも問題はあるのだが、各メーカーにはもっと早くから積極的に導入に取り組んで欲しかったなと思う。

なお、保安基準の改正により2018年6月15日以降の新型車は電柱を模した「ポール側面衝突試験」に対応する必要があるので、おそらく今後は軽自動車もサイドカーテンエアバッグが標準装備になるはずだが、衝突速度は普通車で32km/h、軽自動車は26km/hと、やや“忖度”された試験内容となるようだ。

参考:国土交通省、ポール側面衝突試験の速度を引き上げ…道路運送車両の保安基準を改正

(※)サイドエアバッグ、カーテンエアバッグはそもそも別々のものではあるが、どちらも側面衝突用の装置で後付けができないので購入時にワンセットで考えたほうが無難である。

2018年7月6日追記 新型ジムニーにカーテンエアバッグ標準装備

昨日正式に発表された、SUZUKIの新型ジムニー。
SRSカーテンエアバッグを全グレードで標準化とのこと。
今後登場する軽自動車は同様になると思われる。
→スズキ、軽四輪駆動車 新型「ジムニー」、小型四輪駆動車 新型「ジムニーシエラ」を発売