Q:地元の個人経営の飲食店にホームページ(ウェブサイト)は必要あるか?

A:あるにこしたことはないが、代替策も

小規模な個人経営の飲食店の方から「うちもホームページ(ウェブサイト)があったほうが良いかな?」というご質問をたまに受ける。
漠然と必要性は感じつつもかかる労力や費用面で抵抗があるらしい。

しかし、良い時代になったもので、ご自分で多少の労力を注げば、少額でもパッと見もキレイで最低限の情報が整ったウェブサイトを作ることは出来る。我々のようなウェブの会社に1から10まで頼まなくても、今どき便利なツールがたくさん出ているのだ。


だから
「プロに頼むと値段的にきついし、自分でやるにしてもパソコンに弱いから」
などと最初から投げてしまわずに、ぜひ一度はウェブサイトを作ることができるかどうかじっくり比較していただきたいな……といつも思ってしまう。
もちろん、ウェブサイトは作らずに、運用さえうまくやればInstagramなどのSNSで足りるケースも多々あるはず。

というわけで、その必要性の有無や実行していく策を述べていきたい。

※もちろん「常連さんとその口コミ紹介だけで経営したい」というお店や、パソコンが嫌いすぎてそれを克服するのは考えられない、という場合は今回のお話の対象外です。

来店客にとって欲しい情報が、いつも微妙に足りない

口コミ情報は食べログRettyに任せておくしかない。最近だとGoogleMapもレビューが増えていて、それらを凌駕したといえるかもしれない。
でもわれわれ来店者側としては、これから行こうとする店について、口コミサイト以外でも知りたいことはけっこうある。
たとえばこんなことだ。


1.どこにあるの?
2.定休日や営業時間は?(来週の●日は開いている?)
3.今日は臨時休業とか貸し切りとかになっていない?
4.お店やスタッフはどんな雰囲気なの?
5.どんなこだわりがあるの?
6.おススメはなに?

1の「どこにあるか」という所在地はGoogleMapでも口コミサイトでもわかるが、ちょっと入り組んだ路地の奥や店舗が多数のビルの中に構えていると難易度が上がる。
こういう場合は特にちょっとした文章や写真で説明されているとありがたい。
外観も食べログには掲載されていない店舗も多いし、来店客がほろ酔いで適当に撮ったような写真を公開されるよりは、お店側で撮ったオフィシャルな写真のほうが好印象になるはず。
ウェブサイトを作ってそこに掲載するのが王道ではあるが、後述のGoogleマイビジネスで写真を充実させておくことでも役割が果たせる。GoogleMapにもそれが反映されるからだ。

そして2や3の「いつ開いているか/今日やっているか」は、お店が直接発信する一次情報としてものすごく重要。
定休日じゃないはずなのに、行ってみたら休みだったというあのガッカリ感。
人間はそういうちょっとしたイヤなイメージ・記憶が染みついてしまうと、かんたんに足が遠のく生き物である。
そういう印象を根付かせないのも、お店としてのホスピタリティの見せどころではないだろうか。食べログとGoogleMapで営業時間の記載が違うお店もよく見られて、どちらを信じて良いかわからないことが多い。
個人的には、こういった配慮が見えないと残念だなあという気持ちになる。

また、4~6について、オーナーからすれば「自分のこと」なので当たり前すぎて、興味がない話題かもしれない。
しかし、こちらはあくまで素人で他人。
雰囲気を知ることは、初めての店に行く大きなモチベーションになりうる。
だから、素朴な文章でも全然かまわないので、ぜひなにか書いてほしい。特に素敵なお店だと、どういう経緯でどんな思いでお店を開店されたのかとか、ちょっと知りたいなと思うことはよくある。
これだけ飲食店が多くて自宅でも美味しいものが食べられる時代なのだから、私たちは「その店に行く理由」となりうる個性やこだわりを知りたいのです。

少し話がそれるが、スタッフの採用においてもウェブサイトを持っていることが良い影響になりうる。
店の前に「スタッフ募集」の張り紙をしていたり、フリーペーパーで募集をしていたら、それに興味がある人はスマホで店名を検索する可能性があるからだ。
ツイッターしかないお店よりも、ある程度しっかりしたウェブサイトも持っているお店の方が「ちゃんとしている」と感じる人が多いはず。
複数店舗を持つ当社のクライアントも「ウェブサイトを作りこんでから、応募の質がぐんと上がった」と知らせてくださったことがある。

SNSやブログじゃダメなの?

ぜんぜん「ダメではない」と思う。特にInstagramで必要十分な情報発信をされているお店もけっこうある。SNSかブログのどれかを持っていて、なおかつそれなりの頻度で情報発信(特にいつオープンしているかどうか?)をしているなら、何もやっていないお店より100倍ありがたい。十分に訪問時の参考になる。親切なお店だと毎月のオープン日まで載せてくれているし、前述のような情報不足を解消できる。

ただ、基本的にSNSやブログは情報が体系的にストックされずに、たんに時系列で表示され流れて行ってしまうのがネック。
初めて行こうとする店名を検索してTwitterにアクセスしたものの、なんか店主の愚痴なのか内輪ウケなのかポエムなのかよくわからんツイートが出てきて欲しい情報にアクセスできなかった……という経験はないだろうか。これでは行く気持ちが萎えてしまう。

したがって、上記のような「知りたい情報」にお客さんがSNSでアクセスできるようにするには、プロフィール部分だったり、Twitterなら固定ツイート機能を上手くつかうという運用上の工夫は必要だろう。

ちなみにSNSの中でも「Facebookページ」だけは少し異なる。
ある意味でTwitter・ウェブサイト・ブログの中間のような機能をもっており、ウェブサイトを本格的に立ち上げるまでの“仮のすまい”になるし、そして立ち上げ後も既存顧客との接触頻度を高めるツールとして有用だ。
ただ、Facebookログイン中のユーザー以外は情報を拾いにくいことが難点。

専門知識なしでもウェブサイトを作れるサービスがある

プログラミングの専門知識なんて一切なくても、パソコン操作の基本知識と、分からないことがあれば自分で調べようとする気さえあればウェブサイトを立ち上げられるサービスがいくつかある。
以下が比較的メジャーだろう。
Wix
Jimdo
STUDIO
グーペ
Weebly

デザインのひな形が多数用意されており、そこにあてはめて行けば「とりあえずの体裁」なら整う。
無料プランがあるものはそれで試してみて、自分が使いやすいと感じるサービスの“一番安い有料プラン”を選ぶのがおすすめ。

たとえばWixでは、いくつかの質問に答えるだけでテンプレートを選んでくれる「Wix ADI」という機能がある(下記画像)。まだ発展途上の部分もあるが、今後これはなかなか便利そうだ。

もちろん上記のような各サービスは、拡張性などでそれなりのデメリットもあるが、不足を感じる日がくればそれはおそらくウェブサイトの運用が多少なりとも軌道に乗った時だと思う。
その時に費用をしっかりかけて1から立ち上げを検討すればよい。
後述のような「独自ドメイン」を選んでおけば、いわゆる”URL”、“ホームページアドレス”を変えずにサイトを引っ越しできる。

こういうものに苦手意識の強い店主さんもおられるので無理強いはできないが、やってみてある程度楽しめそうであればさほど難しくないと思う。
パソコンを持っていないければ、4~5万円のノートパソコンでもよいので買っておく必要がある。
(参考リンク)Amazonのノートパソコンを検索したページ

なお、サイトの構成やデザイン面はできるだけオーソドックスにすることをおススメしたい。
プロのデザイナーではない人が漠然とオリジナリティを出そうとすると、客観性を失ったカオスなものになりやすい。
あくまで前述のような「来店客が知りたいこと」をシンプルに伝える、というのがポイント。
その辺りも全く自信がない、お手上げであれば立ち上げ時の設定や構築だけプロに頼んで、その後の更新は自分で行う、というパターンでも良いと思う。

また、少し調べていくと
「WordPressで自分でサイトを作ると良い」
という情報に行き当たりこれを盲信されてしまうケースもあるのだが、趣味のサイトならさておき、ビジネスで使うサイトとしてプログラミングの知識ゼロで管理できるほど簡単なものではない。セキュリティ上の問題などもはらむ。
したがって、よほどの意欲がない限り最初の選択肢からは外しておくほうが無難

併せてやっておきたいこと

・「Googleマイビジネス」の登録
は、ウェブサイト立ち上げの有無にかかわらず必須。
これでGoogleMapにお店を無料で載せることが出来るし、実はこの機能を通じて、簡易的なウェブサイトも半自動的に立ち上がる。例えばこんな感じ↓
https://sirara.business.site/
かなり簡素だが、ないよりはだいぶマシだろう。ひとまずはこれを自店のウェブサイトとしてしのぐ手もある。

また、お店のウェブサイトを立ち上げる時は
・「独自ドメイン」の取得・設定
・「常時SSL」の設定
もお忘れなく。
あとで色々分かってきたときに「やっておいてよかった~」となるだろう。
設定方法については割愛するが、WixやJimdoなど各サービス上に説明があるはずなのでそれを読むか、検索するなどでぜひご対応を。

ウェブサイトを持つと必ずかかってくる営業電話は無視しましょう

ウェブサイトを持つと「SEO対策をして、検索順位を上げませんか?」などといった怪しげな営業電話がかかってくると思う。
※もしかしたら、ウェブサイトを持っていない今の状態でも「ホームページを持ちませんか」といった電話が来ているかもしれませんよね。

もちろん、こういったテレアポが有効な業種やサービスもあるので、電話営業という行為を全否定するわけではないが、基本的に無視したほうがよい。
理由は、数年前から有名なこのツイートに集約されている。


検索エンジン最適化(SEO)の対策はもちろんしたほうが良いが、少なくとも電話をかけてきた業者はそれを相談するには不安なレベル、ということになる。

自分でウェブサイトを運用するメリット

自分で運用するメリットの1つは情報発信の速さだ。
ちょっとしたことならスマホから更新できるし、自分でそれができるようになれば、それこそ臨時休業など急なお知らせに対応できる。

2つ目はやはり費用。
ゼロベースでウェブサイトの立ち上げを普通のウェブ制作会社に依頼すると、小規模なものでも十万円単位となる。
しかし月額1,000円ほどのWixやJimdoで、見込み客のニーズをまずは満たせて機会損失を防げるのなら、そちらから試すほうが妥当だろう。
どうしても作業面でクリアできないところだけ、アドバイザー的にプロに相談すればよい。
ご自分で運用していくうちにきっと課題も見えてくるので、そういう時には我々Webディレクターを使っていただくと効率的ではある。※ここでいきなり宣伝ですみません

そうやって情報が更新され蓄積したウェブサイトがお店への誘導口となり、我々のような一見客がわくわくしながら訪れるという効果に繋がるはずだ。

以上、なんだか偉そうなことを言っているように見えてしまったら申し訳ありませんが、我々はたんに素敵なお店へ、正確な情報で楽しみながら伺いたいだけなんですよ。